誰も知らない

寛大に見えるようでいて、
他者を認める引き換えに、自己を否定する痛みと闘っている私を。

誰も知らない。



集団の中で誰とも癒着せず
誰ともつるまずに端っこで微笑んでいるのは
あぶれてしまった誰かの寂しさを知っているから。


集団で楽しそうに歓談している間
気の緩みを狙って何かを盗もうと、不審な動きをする余所者に目を光らせていることも。
最後尾の誰かが迷子にならないように、
先頭との中間に立って見守っていることも。
一人ぼっちになっちゃった人に寂しい思いをさせないように
声をかけていることも。
年上であるってだけで何も偉いわけでもないのに、
丁寧語を使われていることに言い知れない孤独を感じていることも。


誰も、そんな私を知らない。




誰も、理解してくれるはずがない。
人に優しくされて、たまっていたものが溢れて泣き出してしまったことに驚かれるくらいだから。
みんな、気付かないんだ。

私がピエロを演じるのが上手すぎるんだな。


私がこの仮面をはずすことが出来る場は
ないんだ。